日立労組本部へ
組合員有志らが要請
  

 2005年6月3日(金)、日立労組本部会議室(元亀戸厚生年金会館)において、日立労組各支部・関連労組組合員9名が参加し、日立労組本部に要請を行ないました。
 提出した要請書(全文)をご紹介します。


                           要  請  書

 日頃より日立労組組合員をはじめ日立関連会社の労働者の生活向上に向けて奮闘されている本部役員の皆様に敬意を表します。
 私達は、それぞれ所属する支部や日立グループ労組において、切実な職場の要求実現や労組の取り組みなどについて意見反映と運動を積極的に行ってきました。引き続き各支部において行いますが、日立労組の定期大会前に本部役員の方々に直接私たちの意見を伝え、次期定期大会議案と取り組みへの反映をしていただくため、毎年この時期に要請してきました。今年度も同様の趣旨で要請に伺いました。
 日立の04年3月期連結決算では、売上額、営業利益、純利益とも大きく伸び、中でも純利益は前期比224%の約515億という大幅な利益をあげました。好業績が予想された05春闘で組合員の大きな期待は久々に大きく膨らみましたが、一時金の若干の前進はありましたが賃金では定昇・ベアさえも要求策定時から抜け落ち、交渉時の会社の「下方修正」の脅しの中で一時金も5ヶ月をクリアできなかったことは労働組合の力の低下を示すものとなりました。ここ数年日立をはじめ多くの企業でベアを要求しない労働組合が増えていますが、一時金は業績反映の性格から安定した賃上げ・生活改善とはなりません。私たちは会社が利益を伸ばしているにもかかわらず、ベアさえ要求しないのは、「組合員の生活向上をめざす」労働組合の使命を放棄していると考えます。
 昨年から導入された新処遇制度は、「価値創造(成果)が大きい者を高く評価し高く処遇する」と導入されたが、実態は高く評価されてもレンジ上限者は賃上げがなく、「評価」も予算内での相対評価となり、公正・公平な評価とはなっていないと多くの人が感じ始めています。さらに、導入時に賃金実態から格付け補正を行わず無理に適用したことから発生した「調整給」を受けている人は賃上げの機会さえなくなりました。また仕事の「成果」は個人だけでなしえるものではなく、グループ内の協力や関連部署との共同で始めて実現できるものです。従業員は個人経営者と違います。この「能力・成果主義賃金」は経営者団体の肝いりで導入が促進されていますが、日本の職場実態にはそぐわないばかりか、このままでは「人件費削減」の手段とならざるを得ません。「能力・成果主義」先進企業とされてきた「富士通」でも見直しを余儀なくされている事実を直視し、労働組合が勇気を持って「能力・成果主義賃金」制度の撤回を要求すべきです。
 同時に導入された「HIワーク」は、職場の労働環境を著しく悪化させました。労働時間の規律が緩み、のべつ幕なく仕事に追われることとなりました。この影響は「HIワーク」対象者に留まりません。同僚、上司が「HIワーク」勤務を行えば対象外の人も職場の雰囲気が同様の働き方を求め、ますます底なしの長時間労働となります。日立の仕事の進め方は、上司からの仕事の進行、計画が指示され、それに基づいて進めています。法律の趣旨の「裁量性」がある業務は全社でもほんの一握りの分野です。また、PC稼働時間で記録しているはずの健康管理時間も多くの人が調整し申請しています。この実態は会社の勤労分野からも指摘されています。労働組合が進める労働時間短縮を実質的に進めていくためにも、この「HIワーク」を見直し、せめて厚生労働省が「過労死を生まない残業時間」としている45時間を上限にすることや休出、一斉退場日の「HIワーク」の対象除外措置を直ちに取るべきです。さらに、「サービス残業」させない、過労死を生まないために職場巡視強化や年休取得の促進、余裕ある人員配置を求めるべきです。
 日立は、リストラ・「合理化」を分社化、他社との合弁化という形で推し進めてきました。昨年も情報機器事業部のオムロンとの合弁新会社、日立プリンティングソリューションズのリコーへの売却、海老名事業所の売却、素形材・勝田の日立協和への業務移管などを行ってきました。この間のこうした事業再編は、働く者にはどういう結果を残したのでしょうか。今年の春闘の一時金額では関連会社間に大きな格差を発生させました。家族をばらばらにする単身赴任や移動も広がっています。結局、企業を小分けにし「勝ち組、負け組」の論理を働く者に一方的に押し付けるというやり方だったのではないでしょうか。利益をあげる会社からは連結で吸い上げ、株主には率先して利益還元する。日立のリストラの顛末は、「儲けのために働く者を犠牲にする」だけの戦略でした。働く者の雇用と権利を守るべき労働組合としてリストラ・「合理化」の結果を直視し、ストップをかける時期です。
 先日、JR西日本が引きこした悲惨な「福知山線脱線事故」は、日本の企業体質に警告を与えるものとなりました。「安全」より「儲け」を優先する企業が社会的に批判を受けています。同時にそうした企業行動を制止できない労働組合の責任も取りざたされています。企業は社会的責任(CSR)があるという考え方が世界的に広がっています。数々のステークホルダ(利害関係者)に対し社会的責任を果たすことが求められます。日立や関連企業ではこうしたことが守られているのでしょうか。昨年、日立事業所で起こった労働災害はJR西日本が引き起こした事故と考え方はよく似ています。この事故は、儲けのため賃金の安い未熟な派遣労働者に危険な作業を押付けたことに原因の一端があります。他の事業者や関連会社でも同様なことが行われています。社外事故や製品不良も多発しています。職場では労働賃金が安く、生産調整がし易いという理由で、派遣労働者や請負労働者がドンドン増えてきています。私たちは、企業や職場を守るためにも労働組合が、異常な労働実態や雇用実態を調査し、派遣・請負でなく正規雇用を会社に求め、安全で誇りが持てる製品が作れる職場実現に力を発揮すべき時だと考えます。
 小泉内閣の悪政の中で、今年度だけでも定率減税の廃止、大増税、年金制度の改悪などで国民に7兆円負担増が予定されています。試算では30代共働き3人家族で年間10万円を超える負担で、さらに消費税増税も07年度以降に控えています。そして、アメリカの不法なイラク戦争は、終息宣言後も戦渦は広がるばかりです。参戦した国々もドンドン引き上げてきています。アメリカにひれ伏す小泉内閣の姿勢は、「何よりも平和を」求めるべき労働組合としては許せないものです。また、アメリカの要求に基づき、自衛隊を自由に海外で戦争ができるために憲法九条を撤廃、変質させようとする企ても自民党、公明党、民主党で進められています。平和であってこそ安心して働くことができます。今こそ労働組合が自衛隊のイラク派兵反対や憲法九条を守る運動の先頭に立つことが求められています。
 私たちを取り巻く状況や実態を述べてきましたが、こうした事態を打破するためにも、労働組合が平和、権利、生活向上などの運動でその真価を発揮すべき時ではないでしょうか。新しい年度の労組方針が私たちの生活不安を解消し、組合員が平和な世の中で労働条件の向上に夢がもてるような方針となることをめざし、左記の要請内容を検討頂き、実現されることを強く要請します。

                               記 

1、「イラク戦争は」違法な侵略戦争です。平和憲法を持つ日本がイラクに自衛隊の派兵を続けることは許されません。直ちに「自衛隊はイラクから撤兵せよ!」と政府に強く要求すること。
2、アメリカの要求に基づき、自衛隊を自由に海外派兵し、日本を「戦争する国」に変えようとする憲法改悪は、絶対に許せません。憲法九条の一項、二項は平和憲法の根幹です。何よりも平和を求めるべき労働組合として憲法を守る運動を進めること。
3、前文で述べたように「能力・成果主義」賃金はこのままでは「人件費削減」の手段となるばかりです。断固として撤回させること。さらに、目標管理制度の職制からの目標の押し付けや恣意的な評価を是正させること。
4、残業なしでも生活できる賃金水準めざし、関連会社も含めたベースアップによる大幅な賃上げ要求を掲げ推進すること。特に、他企業と比べ著しく低い専任職の賃金水準向上を図ること。50才以降でも昇給・昇格できる評価制度となるよう要求すること。
5、分社化、合併などの別会社化に対し、明確な反対の立場に立ち、労働条件の切り下げは許さないこと。『会社分割制度』を利用した合併、別会社化については事前協議を行い、内容を事前に公表して対象者の意思を尊重し交渉すること。やむを得ず分割する場合でも労働条件の低下をさせないこと。また、一年後以降の労働条件の低下も日立労組として監視し、著しい低下となった場合は日立本社へ改善を申入れる取り組みを行うこと。
6、雇用ポートフォリオが会社から提起されているが、勤務地の変更や労働条件の低下を一方的に押し付けられる提案には応じないこと
7、日立関連職場で急速に「派遣、請負」労働者が増えています。コストが安く、生産調整もし易いなどの理由で安易に導入されていますが「派遣、請負」労働者の状態は劣悪です。派遣社員の過労自殺も起こっています。違法な偽装請負も多くの職場で見られます。日本経団連の企業行動憲章では「均等待遇原則の徹底」を宣言しています。「派遣、請負」で1年以上勤務し入社を希望する全員を正規採用することを会社に要求すること。
8、サービス残業=不払い労働の一掃に向け、厚生労働省の『基準』や『指針』を遵守し、その内容の完全実施を一刻も早く行うこと。HIワークの実態の監視と過労死を生まない健康管理時間上限引下げ、一斉退場日、休日出勤のHIワーク適用除外し、過度な仕事の押付けが行われない制度となるよう改善すること。IDカードなどを使った始業・終業時間管理、残業予算で「上限を設定しないこと」の徹底、「労使合意による賃金不払残業撲滅の宣言」、一斉退場日や平日・休日残業時の職場巡視の強化、サービス残業などの実態把握と適正な人員増の要求などを実現させること。
9、日立のリストラによる別会社化や関連会社再編・業務移管・株式譲渡などは、そのグループ経営者の意思ではなく日立製作所の方針に基づくものとして行われています。分社化などは結局「労働条件低下」に繋がっています。こうした労働者犠牲の提案に対し、各グループ経営者に対し別労組として交渉・運動を行っても「日立本社が決めた決定」を覆すことは困難です。労働者は数の力・団結で闘うものです。日立グループ連合が日立本社と交渉する機能を果たすよう強化すること。
10、現在のリストラは、地域における関連企業の倒産など日立の各事業所だけの問題ではありません。自治体や下請企業などと共同し、日立のリストラを撤回させる協力・共同を進めること。
11、来年4月から改正高年齢者雇用安定法が施行されます。この法律では(1)定年の引上げ、(2)継続雇用制度の導入、(3)定年の定めの廃止、いずれかの措置をとることを定めています。日立はシニア所員制度がありますが希望者全員が採用されていません。65歳定年の導入や希望者全員がゆとりを持って働ける制度が必要です。今年度にそうした雇用延長措置を実現すること。
12、休日増加による『夏休み休暇』の実現や一日の労働時間の短縮を図り、雇用の拡大を図ること。特に「技術の伝承」のためにも若年労働者を正規で採用することを要求すること。また年休完全消化のいっそうの推進など労働時間の短縮に取り組み、年間1800時間を実現すること。
13、労働環境悪化による健康破壊、ストレスによる心身障害を起こさない職場環境作りを行うこと。特にJITによる立ち作業の廃止を即刻要求すること。
14、寮・社宅費の引き下げ、住宅手当の拡充、慶弔休暇の賃金完全補償、作業服の無料化などの福利厚生充実を要求すること。「財形貯蓄利用」までマイナスカウントになるカフェテリアプラン制度を誰でも行使できる制度にさらに改善すること。
15、女性が自信と余裕を持って仕事と家庭の両立を図ることができる職場環境、様々な支援施策を拡充すること。特に少子化対策ともなる子育て期間の仕事の軽減、余裕を持った人員計画、育児休業後の現職復帰支援などF・Fプランの理念が生かされる措置がすべての職場で実現するために努力すること。女性の格付けや賃金の是正、作業環境整備などを推進すること。神奈川で実施された「企業内託児所」の拡充と他支部での要望アンケート実施や保育園新設を進めること。
16、組合資料は全組合員に公開すること。特に賃金、格付、一時金実態の調査時報を希望者には閲覧させること。
17、全組合員参加の労働組合活動を作っていく上で十分な職場討議が必要不可欠です。しかし、職場討議がなかったり、討議が短時間で行われたり、「メール職討」となっていたり、組合員への説明や疑問に答え討議を深めることが不充分です。支部段階での討議時間拡大を本部の方針として打ち出すこと。
18、春闘、一時金、労働協約改定など重要なたたかいにはアンケートなどを活用し、全組合員の要求を汲み取る努力をすること。
19、組合役員選挙などの民主・公正化をよりいっそう図ること。特に自由立候補条件制限の廃止、公職選挙法並みの投票の実施によって立候補者と投票者の秘密と権利が守られる選挙制度を実現すること。
20、組合員の政党支持の自由を完全に保証し、組合費からの特定の政党・候補者への寄付・カンパは行わないこと。特定候補者の押し付けを行わないこと。また、「ぐるみ選挙」と批判の多い地方選の組織内候補擁立を廃止すること。
                                                          以上
2005年 6月 3日

   日立労組及び関連会社労組組合員有志
     日立支部   佐竹 光生  日立支部   舞良 喜久  水戸支部   真坂 秀男  国分支部   及川 栄一
     大みか支部  馬場 豊彦  旭支部    成木 彦朗  武蔵支部   谷口 利男  小田原支部  中村 由紀子
     京浜支部   関  知男  横浜支部   原  大雄  神奈川支部  宮崎 良司  神奈川支部  小島 崇義
     GST支部  戸田 平次  日立工機労組 堀  啓一 HESCO労組 岩間 雅美 AEパワーズ労組 吉村 哲司
     日立空調システム労組    多田 義幸  日立ビルシステム労組 大原 直樹 日立インダストリイズ労組 奥山 耕
     日立アイイーシステム労組  山口 豊太郎 日立コミュニケーションテクノロジー労組 須崎 明美

     
日立製作所労働組合・日立グループ労働組合連合会
   中央執行委員長・会長 根津 和吉 殿

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